競馬界に激震?来年度重賞日程大変革

 先日、JRAは2025年度の開催日程、および重賞競走の変更点を発表しました。数十年競馬を見続けてきた筆者の記憶にもないほど、多岐にわたる変更を一挙に詰め込んできた感。今年の創設70周年を経て、新しい時代に踏み込むJRAの意気込みとも受け取れるのですが・・・・。今回はその主な内容をまとめつつ考察してみます。
水上学 2024.10.01
誰でも

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なお、今回もコメント欄を開放しております。みなさまに伺いたいテーマは文末に記しておりますので、今回も最後までお読みくださると幸いです。変更点のあまりの多さに、本来は2回に分けたいくらいなのですが、敢えて1回にまとめたことでその分量を感じ取って頂ければと思いまして(苦笑)。

       

◆暑熱対策の拡大

 今年の最たる変更点だったのは、初回のこのメルマガで配信した暑熱対策でした。これはその時に予測したように、来年さらに拡大されることになりました。

 今年は新潟開催だけ、しかも2週限定でしたが、来年は新潟と中京で4週間実施されます。つまり、8月開催はもう従来の小倉ではなく中京で固定するということを、暗に宣言したものでしょう。

 小倉よりも高温となりがちな中京(豊明市)でなぜこの時季開催するのか?という意見は今年もたくさん出ましたが、中京でやりたいというより、やらざるを得ないということなのだと思います。私のツイッターに現地在住の方から寄せられたのですが、小倉競馬場の地形や地勢の関係で、夏でも夕方早い時間から競馬場は影に入り、開催に必要な明るさを確保できないのでは?とのこと。また最終レース後の栗東への帰路に掛かる時間、移動に新潟よりも難しさがありそうだということ。秋へ向けて芝を保護しないといけない京都、阪神を夏に休ませるとすると、もう中京しかないわけです(なお札幌・函館の同時開催は馬房数の点で現状不可能とのJRAコメント有)。

 今年の新潟での試験施行からは少なからず問題点も指摘されていて、その辺の煮詰めも今後行われることでしょう。

 そしてもう1つ、JRAはこれを暑熱対策のためとはしていませんが、宝塚記念の2週繰り上げも私はその一環だと考えています。多くの調教師サイドからも、超一流馬たちを暑さの中で仕上げなければならないリスクを理由に、要望が出ていたという話を耳にしています。

 初夏の時期なので、2週の繰り上げでも気温はかなりましになります。猛暑の去年、今年とも、もし2週繰り上げていたら当日は3~4度低い気温で実施できていたのです(筆者調べ。宝塚市ではなく神戸市の気温ですが)。

 またオールドファンなら思い出せると思いますが、1970年代後半には、宝塚記念がダービーの翌週に行われていた時期がありました。私からすれば、大昔に戻ったと感じるくらいです。個人的にはノスタルジーはともかくとして、繰り上げても競馬の体系に影響がなく(むしろ秋競馬へ向けて一流どころが早く休みに入れる)、かつ暑さのリスクも下がるという点では諸手を挙げて賛成できる変更です。

◆名称変更の実態は?

 個人的に、いろいろ思う所があるのはこの項目です。主な変更をまとめておきます。(小さな間違いや事実誤認はあるかもしれません。なにせ細かいので・・・)

*従来のリステッドレース「米子S」が、「しらさぎS」と名称変更して重賞昇格。

*3歳のマイル重賞「アーリントンC」が「チャーチルダウンズC」に名称変更。

*愛知杯を「小倉牝馬S」に名称変更。時期と距離は愛知杯と同じ。

*京都牝馬Sを「愛知杯」に名称変更し、3月23日に芝1400mで施行。

*マーメイドSを「府中牝馬S」に名称変更し、6月22日に芝1800mで施行。

*従来の府中牝馬S(旧成績名称アイルランドトロフィー府中牝馬S)は、時期と距離はそのままにして「アイルランドトロフィー」に名称だけ変更。

*小倉2歳Sは「中京2歳S」に名称変更し、時期は同じだが距離を1400mに延長して施行。

以下、☆は筆者のツッコミ集です。

☆米子Sの名称のまま昇格させるのではダメだったのか?

☆まあアーリントン競馬場は閉鎖して3年経つから、この変更は妥当。

☆それにしてもこの名称変更ラッシュは酷すぎる。完全に新設にしてしまうと、国際ルールでグレードを維持できないケースもあるのでそれを避けたいがゆえの措置と思われるのは承知なのだが、そこは今後日本が旗を振って変えていくべきでは?

☆実質はどれも名称変更に名を借りたレース統廃合。施行条件の設定には意味があるものもあるが、目下疑心暗鬼になっているのはレースの施行回数。例えば小倉牝馬Sは、中京2000mで行われていた愛知杯の試行回数を引き継ぐ形になる公算で、実質新設なのに第1回とならないであろうこと。そして愛知杯はおそらく京都牝馬Sの施行回数を継続する?じゃあアイルランドTの施行回数はどうなる?府中牝馬Sの施行回数はどちらを採る?

もし失敗したらアーカイブとしての競馬は滅茶苦茶になりかねない・・・以上。

◆施行時期の変更ラッシュ

*トライアルレースの1週繰り上げ

フィリーズレビュー、チャーチルダウンズC、スプリングS、青葉賞を1週繰り上げます。またリステッドのダービートライアル・プリンシパルSも1週繰り上げます。

 これにより、過去の春のクラシック関係の臨戦データは、一切使えなくなるでしょう。

*夏場の重賞のシャッフル移動

関屋記念、函館記念、小倉記念が2週繰り上げられます。サマー2000mにおいて、七夕賞から小倉記念というローテはほぼなくなるでしょう。

アイビスサマーダッシュが1週繰り下がります。関屋記念移動との兼ね合いでしょう。

中京記念が4週繰り下げられます。これにより、サマーマイルシリーズにおいて、中京記念→京成杯オータムHというローテはかなり難しくなります。

*ダート路線の半年入れ替え

プロキオンSが半年繰り上がって1月26日、中京1800mで施行。

東海Sが半年繰り下がって7月27日、中京1400mで施行。プロキオンからは中2週でフェブラリーSに行く馬も出そうですが、東海Sを夏に持ってきた理由はよく分かりません。この時季にダート短距離馬に目標を作ったということなのでしょうが、約1か月後にある佐賀の交流重賞サマーチャンピオンへの連戦は確かにし易くなりますね。また6月のさきたま杯からの誘導もできるということでしょう。

*その他

スワンSが2週繰り上がります。これにより、スプリンターズSからの出走が減りそう。その分、マイルCSへの誘導はし易くなるかもしれません。ただ、あまり意味のある移動には私には思えません。

◆今回の変更で懸念されること

・・・とまとめてみましたが、レースの表面上の変更だけでなく、細かい施行条件や競走規定細則の変更も、10月以降出てくると思われます。

 何より問題なのは、長年積み上げてきたレース施行データの大半が、一瞬の内に更地になってしまったこと。馬券を買う上で、ファンの手掛かりの何割かは確実に喪われることになります。

 そもそも、ここ10年は毎年のようにどこかの競馬場の改修工事を行って代替開催によるイレギュラーが続き、また降級廃止や新馬戦や未勝利戦終了時期の繰り上げ、斤量規定の大きな変更などもあり、この10数年は2年と同じ条件下で施行されたことがありません。確かに競馬全体の向上のために、常にブラッシュアップするのは当然なのですが、それにしてもその度合いが激しすぎる・・・と思っていたところに、10年分を1年にまとめたようなこの変更。これはさすがにファンを蔑ろにしてしまっている側面もあるのではないかという感想を持たざるを得ません。

 そもそも、これだけの改定をするというのに、JRAは「スポーツエンタテイメントとしての一層の盛り上がりのために」という、実にふんわりとした抽象的な文言でその理由をまとめてしまっていることには腹立たしさすらおぼえます。レース体系はその国の競馬の根幹であり、どんな馬を生産すべきか、どんな育成を施すかということにも繋がっていきます。これだけ一斉に変えるからには、個々の事項について、なぜこうしたのかという説明をするべきだと思うのです。あと3ヶ月、年末に向けてさらに詳細が出てくる中で、JRAがどういう姿勢を示すのか楽しみではあります。

◆ご意見読ませてください!

*今回のレース変更に関するご意見

*このメルマガで取り上げてほしいテーマ

以上について(どちらかでも結構です)、コメントを寄せてくださると嬉しいです。よろしくお願い致します。

なお、ここまでお寄せくださったコメントについて、そのうちまとめてご返事させていただくかもしれません。その際は非公開でお寄せいただいたものについては、お名前を出さずに取り上げます。

◆最後に宣伝で恐縮です。

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