酷暑1週目の競馬に思うこと

今夏のJRAの暑熱対策は、昨年と同じ形式でスタート。フォーマットは継続ですが、期間が拡大されて6週間の実施となります。新潟と中京は第5Rを正午前に行ったあと、3時間20分の長い休み時間を取り、午後3時から再開、夕方6時半まで施行。今回は、この1週目を新潟で経験した筆者が、あくまで空想、妄想とおことわりした上で今後の暑熱対策を占ってみます。
水上学 2026.07.28
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 のっけから恐縮ですが、前回の記事アップから時間が空いてしまったことをお詫び申し上げます。生来の怠惰な性分が一番の理由ですが、10月初旬に出版予定の拙著の作成と、6月から週末のローカル出張がスタートして金曜日が移動で潰れてしまうことなどもあって(言い訳です)、このような次第に相成りました。

 だからというわけではないのですが、今回も前回と同じ暑熱対策がテーマとなります。決してネタを探すのをサボったわけではございません!(汗)

 ふざけた前置きはこのくらいにして本題に入ります。

 前回の当Letterでは2027年、つまり来年の暑熱対策についてJRAが発表した直後に、その内容と問題点を指摘しました。真面目な話、同じネタで連続して書くのはどうかとも思ったのですが、今年の夏は前回を書いた当時の見通しを大きく超えるレベルの暑さ(第1週の新潟は涼しくて暑さは回避できたのですが、替わりに警戒レベル4の一大ゲリラ豪雨が日曜午後の競馬場に襲来しました)。来年の対策がいかに甘く無意味なものかということに対し、大げさでなく焦燥感に駆られました。そこで、再来年以降の動きについてあくまで私の「想像」をたくましくしてみたいと思ったわけです。

■「競馬をやってはいけない」の声が出た中京

 7月25日の土曜、私がいた新潟は30度で収まってくれましたが、中京開催は最高気温39.1度の中で行われ、26日も37度を記録とのこと。

 この日、私は午後2時半すぎに競馬場を出て仕事のため東京へ向かい、道中はradikoのエリアフリーで関西圏の競馬実況を何局かハシゴして聞いていたのですが、開催に批判的なことは普段まず口にしない競馬記者の方々が「これなら小倉の方がまし」「競馬をやっていい場所ではない」と断言していたことから、本当にヤバイ気候だったのだろうと推察されました。これが昼休み終了後のことですから、3時間もの中断にあまり意味がなかったことになります。

 レースでも、不可解な走り方をしている馬が何頭もいましたし、騎手コメントでも26日の重賞・東海Sで人気となっていたダノンフィーゴの川田騎手が「明らかに熱中症になっていた」と発言、ファンのSNSは競馬施行の是非を巡り荒れ模様となりました。またこれも人気の一角だったドラゴンテイラーは途中からズルズル下がっていき、1頭だけ大きく遅れてゴール。これまた「暑さにやられた」とのコメントが出ています。

 公式コメントが出ていないレースでも、おそらく酷暑で能力を出せなかった・・・くらいならまだいいのですが、異常をきたして走る気を失くした馬が何頭もいたことは明らかです。

 こうなると、JRAが最重要のお題目として掲げている「公正競馬」はどうなのかということにもなりますし、来年の新しい施行スタイルでも時間帯は午前がないだけで今年と同じ、つまり暑さに対して効果がない可能性は高くなります。新潟でも、午前中のまだしのぎ易い時間帯の競馬が無くなることが話題となり、「まともなレースができる時間帯をわざわざ削るとは、理解不能」という声が一部の競馬マスコミから聞かれました。

 幸い、先週の開催が終わって48時間以上経った現在、熱中症で馬が倒れたとか、生命の危機に瀕したという事例は入ってきていないので、そこは厩舎関係者のケアで何とかなったというところですが、今のままでは天気が悪くなって気温が抑えられる巡り合わせにならない限り、中京地区ではあと5週間の開催、炎熱地獄の気候で競馬を行うことになるでしょう。

■妄想が現実になる日?

 おそらく、JRAも来年実施する新しいスタイルが完成形とは思っていないはずです。そもそも、前回のLetterでも指摘したように、本来なら夏場に行うレースを大幅にカットして他のシーズンに回すという毎年かなり歪みの出る編成を今後の通例にするなど、本気で思っているわけがないと思うし、万一そう思っているとしたら、競馬のレース体系の意義、重要性というものに対する意識が杜撰と言わざるを得ません。

 ここからが私の妄想なのですが、おそらく、2027年度の施策はJRAにとってはいわゆる「時間稼ぎ」ではないのか?真の暑熱対策は、その翌年か翌々年に表れるのではないか?

 それはズバリ、「中京と新潟の無観客ナイター開催」だと思うのです。

 私は前回、ナイター開催が物理的にいかに難しいかということを書き連ねました。しかし、改めてよくよく考えてみれば、もしかしたらJRAは徐々に外堀を埋めつつあるのかもしれないという気がしてきたのです。

 まずナイターにすることで、暑熱に関する危険は大きく改善されることはいうまでもありません。ここからはそれ以外の以前取り上げた障壁について1つずつ考察していきます。

 まず近隣住民との騒音、安全に関する問題ですが、これは新潟よりも中京において切実だと思います。これは無観客にすることで一気に解決されます。

 無観客にすることで、場内の飲食業者に対する補償問題が生じますが、人件費、光熱費(コースの照明はかかりますが、巨大なスタンド全体の冷房や、営業店へ提供する電気代は無くなります)、さらに清掃費、警備費などが大幅にカットできます。その分で、6週間程度の補償は賄えるのではないでしょうか(試算はしていませんが)。

 そして放送媒体との兼ね合いですが、テレビやラジオ中継などは放送枠の問題などで生放送は厳しくなると思います。しかしJRAとしては、春にグリーンチャンネルのYouTubeチャンネル配信をスタートさせ、実質実況については無料化をしています。ファンはこれを見ればいいということなのではないでしょうか?なぜYoutubeで無料化したのか、出先や行楽先での視聴を充実させるのが最大の目的ですが、さらにナイター化への対応も容易にできるとは、改めて今回気付かされました。

 また地上波テレビやラジオは、土曜日曜は従来通り日中の時間帯に行う北海道開催を中継すればいいわけですから、大きな損失を受けることにもならないでしょう。

 そして厩舎関係者の労務時間や馬の移動問題ですが、中京ならナイターが終わってからでも、関西馬は日付が替わる前に栗東へ戻ることができます。関東馬は中京競馬の滞在馬房に1泊。新潟については、たとえば5R以降の人馬を新潟に滞在させて翌日帰路ということを考えているのではないでしょうか。もちろんそれでも厩舎スタッフの皆さんは遅くまで労働することになりますが、年間通しては無理でも、そこは6週間なら特別手当をJRAから支給することは可能でしょう。

 そもそも1日12R施行でなくて、10R施行あたりを考えているのでは?これなら終了もそれほど遅くならないですし、削られたレースを来年度のように他へ分けるにしても、その歪みは圧倒的に小さくなります。つまり、来年の施策はこの「他場振り分け」の予行演習ではないのか?そんな気さえするのです。

 とにかく40度レベルの暑さ、馬の健康を第一に考えると、強く反対する層は少ないのではないかと考えるし、おそらくJRAはその辺のリサーチも、騎手や調教師、馬主など、それぞれ徐々に進めるつもりではないでしょうか。

 ファンサイドとしてもそれは同じで、当初はマスコミやファンから強い反対の声も上がるかもしれませんが、馬のため騎手のためという大義名分なら結局のところ呑み込むでしょうし、無観客でも競馬が楽しめることは先のコロナ禍で実証されています。何より、暑さにまいって馬が走りませんでした・・・という事態がかなり減ることは大きなメリットでもあります。

 もちろん何度もおことわりしておきますが、これは筆者の空想、妄想の類です。何かの根拠があって書いているわけではありません。ただ、このところの状況を繋ぎ合わせるといくつか腑に落ちることが出ていると共に、もしナイターが可能な環境が水面下で整ってきた(水面下で進めて、目途が立つと観測気球を上げるというのはJRAのパターンですが)のならば、ここ1年2年の間に更なる大きな動きが出てもおかしくないのでは?と考えた次第です。もちろん、もっと細かい所で解決すべき問題や障壁はたくさんあるわけですが、この暑さが今後数十年は続くという予測が出ている以上、安全かつ健全な夏競馬運営を維持するためにも、これくらい思い切ったことはしてみるべきではないでしょうか。

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