競馬はどう見られているか
競馬ライターの水上学です。今回も「水上のニュースレター」をお読みくださりありがとうございます。メルマガ未登録の方は、ぜひ無料での配信登録をお願い致します。
◆懸案事項への指摘相次ぐ
今回の質疑は競馬ファンの間で話題となり、その大半は競馬に対し批判的な?質問を浴びせた一部の議員を攻撃するものでした。ただ筆者は、それぞれの質疑に競馬ファンが心得ておくべき大事なポイントというか、一般社会からの視点があらわになったという意味で、重要な示唆を含んでいたと思うのです。
審議の大きな目的は、すでにニュースでご覧になった方も多いと思いますが、農業への集中対策の財源としてJRAから国庫へ対し向こう4年間で年250億円ずつ計1000億円を供出すること、また競馬関連施設を地域貢献のために利用できる範囲を広げることなどですが、競馬そのものが抱えている昨今の問題点についても質疑が交わされて、むしろそちらの方が競馬ファンの耳目を集めたわけです。
日本維新の会の佐々木議員からは、競馬場の地域貢献の活性化と、若い騎手のメンタルケアについての対策が問われました。佐々木議員は配偶者が競艇選手とのことで、公正性と人権の間で厳しく身を律することの苦労を間近で見ており、その立場からの提言は興味深いものがありました。またレース映像などJRAが著作権を所持するコンテンツについて、二次利用の拡大を促す提案もありました。
立憲民主党の石垣議員からは、特別積立金250億円×4年=1000億円について、一般会計に混ぜ込まずに別立てで使途を明確にすべき、そして4年の期間を延長しないようにすること。
さらに先日、仔馬の虐待映像がネット上に流出した浜本牧場の件に絡めて、動物愛護が現場に徹底されているかの確認。また厩務員の労働環境。
そしてネットニュースで最も記事にされていたのが依存症対策について(CMが射幸心を煽る内容になっているのでは?という指摘が一部競馬ファンの怒りを買って話題となっていたようですが)の質問でした。
発言は先日のドバイミーティングについても及び、国の渡航自粛勧告が出ている中で、JRAとしても自粛要請をしたにも拘わらず、紛争地域であるドバイへ渡ってレースに出走した陣営について、今後こういう事態が起きた場合に競馬の特殊性を言い訳にせず、歯止めとなるルール作りを望むという提案がありました。
国民民主党の舟山議員からは、特別積立金が国によって都合よく取り立てられ使われるようになるのではないかという危惧、さらに騎手のコンプライアンスに関する質問=スマホ持ち込み問題に関する厳粛な対処要請と、石垣議員と同じく動物虐待の防止、アニマルウェルフェアにおいて他の動物に比べ馬への関心が薄いのではないか・・という点の指摘など。
以上が主な質疑内容でした。そのほとんどがこの1年以内に起きた件であり、改めて競馬界には現在、問題が山積していることを突き付けられた思いがしました。
さらに長年の課題(動物愛護や依存症など)に対しては、JRAも対策を講じてはいるものの、筆者としては「一応やってますよ」だけで流していたようにも感じていたので、これらの問題が国会で取り上げられ議事録に残ることは重く受け止めるべきだと痛感しました。
JRAの吉田理事長からの回答には、とくに目新しいというか、根本的な解決に結びつくようなものがなかったのが残念で、大半は現在の対策の説明と「善処してまいります」的な無難なコメントに終始しました。
ただ、今後JRAの諸問題への対策が、今回の質疑を受けて強化・改善していくことは確実と思われます。
◆今回の質疑がもたらすもの
今回の質疑内容だけでなく、それらに対するファンのリアクションを眺めていて筆者が危惧しているのは、競馬ファンとそうでない人たちとのギャップが大きくなっているのではないか、ということ。競馬村の中では常識だったり正義だったりすることが、世間では必ずしもそうではなく、むしろ批判や疑問の目を向けられていること。競馬村では二の次とされている(他人事と看過されている)動物愛護や依存症などが、世間では重大視されていること。
競馬ファンにとっては「ギャンブルの側面は強いが、競馬にはロマンがあるから」といっても、そもそも競馬に関心が無い人や批判的な人には通じないので、そこを主張しても始まりません。現に依存症が人生や家庭を狂わせた例はたくさんあるわけで、そういう状況において世間から理解を得るためには、JRAも明確な対策を提示していく必要があるでしょう。
そして、JRAも現状の依存症対策だけでなく、売り上げの活用内容や競馬界の雇用体系の仕組み、現在すでに行っているスマホ持ち込み対策への監視強化策、引退馬関連の事業内容などについて、HPの分かりにくいところに押し込めてよしとするのではなくて、それら対策だけを集めた別のHPを作成し、競馬ファンだけでなく一般社会からも容易にアクセスできるようにするべきです。コンプライアンスというと堅苦しいですが、逆に世間の誤解を解く好機が来たと前向きにとらえる姿勢が望まれます。
なお、それぞれの件についての現状や筆者の見解は、以前当Letter内で取り上げたものが多いので、恐縮ですがそちらを併せてお読みください。
競馬の国庫納付と売上金の行方については2025年7月14日付「競馬のマネーフロー」
動物愛護については2025年6月26日付「競馬は動物虐待か?」
依存症対策については2025年2月11日付「競馬を悪者にしないために」
スマホ持ち込み問題については2024年12月16日付「延焼するスマホ不正利用問題」
以上の回でそれぞれ取り上げています。
また、今回の参院の質疑応答については
で一般に公開されていますので、興味がおありの方はご覧ください。
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