「斤量規定の見直しを!~読者さんのご提案に応えました」
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競馬ライターの水上学です。今回も「水上のニュースレター」をご購読くださりありがとうございます。メルマガ未登録の方は、ぜひ無料での配信登録をお願い致します。
なおコメント欄を開放しております。みなさまに伺いたいテーマを文末に記しておりますので、今回も最後までお読みくださると幸いです。
寄せられたご意見を要約すると「ハンデ戦や一部のオープンでの負担斤量が重すぎると感じるケースが多い。これについてご意見を伺いたい」というものでした。
私も実は以前から同じことを感じていて、雑誌の連載記事でも訴えたことがありました。今回は読者からのテーマご提案の第一弾として、改めて私見を述べることにします。
なお、障害競走の斤量は、平地と並べて語ることができないので今回は除きます。また南半球産馬への特例措置や、距離別の負担規定なども含めると話がかなり複雑化するので、今回はそれらには言及せずシンプルにしたことをご了解ください。
◆実情を調べてみました
筆者が以前紙面で指摘したのは、オープン特別の別定戦において、勝負になる可能性がかなり低い高齢馬が、60キロ以上の斤量を背負わされては大敗を繰り返すことの無意味さと、単に収得賞金の高さだけをもって、年齢を考慮せずに現状の能力に反映させているルールの不備についてでした。
ご存じのように「斤量差が1キロあれば、それは3馬身相当の差に繋がる」と言われているわけで(具体的なデータは見たことがないですが)、斤量差が着順に影響を与えていることは明白です。ただし、単純に比例関係にあるわけではなく、ある程度の斤量までは明確な差が出ないものの、個体差はあるにせよ、58キロあたりを境に急にこたえるケースが出てきているように思います。
重い斤量を背負っているということは、当然フィジカル的に最も充実期にあるか、あるいは競走生活で実績を積んできた強い馬であることを示しているわけで、そういう馬が重い斤量を背負うというのはある程度なら納得できるというか、当然でしょう。個人的に問題だと思っているのは、過去の栄光が結果的に評価されすぎ、概して衰えが顕著となる高齢馬に適用され、しかもその数字がとても好走不可能な極量(あくまで現在の感覚ですが)になっている点です。
私が記述した当時と比べると、現在はルールが若干変更されているので、改めて現行規定を確認しておきましょう。
*重賞では、2023年から賞金別定がグレード別定に変更されたケースが多く、GⅠを勝っている馬は重く、勝っていない馬は従来より軽くなっており、GⅠ2着馬がやや出走しやすくなっている。
*今回の焦点となっている3歳以上・4歳以上のオープン特別(リステッド、非リステッド合計)については依然として賞金別定が残っている。
この斤量ルールにはA、Bの2種類がある。
Aは、牡馬については57キロを基準とし、収得賞金1600万を起点に、1200万の加算につき1キロずつ増加していく。つまり1600万以上2800万までは57キロ、2801万以上4000万までは58キロ・・・のように増えていく。
Bは、Aと同じ起点基準だが、加算が600万ごとに1キロとなっている。
以上が現行ルールとなっています。
続いて、実際のレースにおいて60キロ以上を課せられた馬の成績を調べてみました。
期間は2023年1月から24年10月1週目までに行われたJRAの平地オープン特別(3歳以上、4歳以上)です。
*着順成績は【0-2-2-21】(うち1頭は競走中止)
芝ダートで分けると、芝は【0-0-1-6】、ダートは【0-2-1-15】。
*最高斤量はメイショウカズサが6歳時のエニフSと7歳時のすばるSで背負った61キロ。あとはすべて60キロちょうどだった。
*連対したのは2023年バレンタインSのルフトシュトロームとグリーンチャンネルCのベルダーイメル。ただし前者はこのレースを最後に引退、後者はその後現在まで3着以内がない。
*60キロを背負った最低年齢はコンバスチョンの4歳、最高齢はジャスパープリンスの9歳。
なお、メイショウカズサが61キロとなった2つのレースは規定Aのため、前述の1200万ごとに加算されていくルールでした。収得賞金が7000万円だったので、加算の刻みにより61キロとなるわけです(6401万以上7600万以下に該当)。
◆簡単にできる改善策
この賞金別定のルールが存在する必然性については、正直なところ判然としません。ただ60キロ以上を課せられた馬の多くが勝負になっていないところをみれば、もっと緩和させる必要はありますし、馬の安全にもつながります。
最も簡単な改善案は、賞金の刻みの金額をもっと広げること。もし、1200万ではなく1500万刻みだったならば、メイショウカズサは59キロで出られました。これくらいの斤量なら許容範囲でしょう。またダートよりもスピードが出て、路盤からの反作用も大きくなる芝では、そもそも上限を59キロに留める方が故障回避にもなります。
前回私が述べた凱旋門賞を勝つための「重斤量への慣れ」とは逆行するかもしれませんが、日本の芝は海外競馬よりもスピードが出るために、脚への負担を考えれば極量を背負わせるわけにはいかないし、そもそも今回私が問題としているのは力の衰えている高齢馬へ対する現状の過酷さなので、海外GⅠを狙おうかという強い馬はまた別の話です。
勘繰ってみるに、除外馬を減らすために高齢馬には出走をご辞退願って、若い馬を優先的に?出走させたいというのがJRAの狙いなのかもしれませんが、現行規定だと高齢馬だけでなく、5歳あたりでも59キロを背負うケースが出てきています。よって、重賞で勝ちあぐねていても2着賞金を積んで高額になっているというような場合に、オープン特別を勝って勝ち癖を付けたいと思っても、斤量面で出走に二の足を踏んでしまうケースも・・・・。
全てのオープン特別がそうである必要はありませんが、賞金別定そののものルールを見直して、強い馬がもう少し出走し易い環境を整えるべきだと思います。
◆その他のお便りから
今回は読者様からの声から気付いたことをテーマに、以前からの持論を述べてみました。
この他にも「引退馬の余生について取り上げてほしい」というご意見も頂戴しました。ただこれについては、角居勝彦・元調教師が能登の地震や水害で被災しながらも、私財を投げ打って経営されている引退馬引き取りの事業をはじめ、いくつもの畏敬すべき取り組みがなされているので、そういった方々からの直接の発信に優るものはないと思います。知識の薄い部外者が直接取材もせずにいい加減なことは書けないし、またこの分野についてライフワークのように取材されているライターさんもいらっしゃいます。もしご関心があれば、事業を運営されている方のサイトや、取材者諸氏の記事にアクセスされるのが一番だと思います。
また読者の佐々木様、アポロ様からは「レースの条件やレース名がコロコロ変えられて、季節感やおなじみ感が消えている」ことへのご不満が寄せられました。これについては多くのファン、マスコミが以前から声を挙げているのですが、JRAのレース編成は全く聞く耳を持ちません(苦笑)。重賞ですら、あのようにアッサリ激変させてしまうのですから・・・・残念ながら今後も期待薄ですよね・・・としか申し上げられません。
思い出の馬をお尋ねした回では、シンボリルドルフ、トウカイテイオー、ライスシャワー、スペシャルウィークなどの歴史的名馬はもちろん、なんとランニングフリーというシブすぎる馬も出てきてニヤニヤしてしまいました。そのうち、正式に投票を募って、「メルマガ読者様の選ぶ競馬殿堂」なんて企画も面白いかもしれないと思いました。
◆今回はちょっとライトな感じになりましたが、またお声が蓄積されたら取り上げさせていただこうと思うので、引き続きお声をお寄せくださると嬉しいです。
記事へのご感想、扱ってほしいテーマに加え、今回は「現在のJRAでいちばん不満に感じていること」というお題でもよろしくお願い致します。
◆最後に宣伝で恐縮です。
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